◆台湾改正特許法は2013年1月1日に施行されます。改正特許法の要点は次のとおりです。
1、2013年1月1日以降は特許（発明）、実用新案、意匠（設計）は「創作」という名称に統一されます。
2、2013年1月1日以降は意匠に対応する台湾の用語「新式様専利」を「設計専利(design)」に変更します。
2-1）、意匠は物品自体のデザインで、物品との一体性要件は維持されます。デザイン自体が保護対象として認められません。
2-2)、設計説明（意匠の説明）欄に公知意匠にない新規な特徴点を記入する必要があることが維持されます。ここで、登録意匠の権利範囲の解釈は図面に開示された物品の外観に準じて意匠の説明欄に記載の新規な特徴点を参照することによって行われます。例えば、図面がカラーで表示され、意匠の説明欄に色彩を主張する旨を記入しない場合、登録意匠の権利範囲は色彩を主張しないと認定されます。
2-3）、2013年1月1日以降は、アイコン、ウェブサイトのユーザーインタフェース（GUI）は意匠登録することができます。物品を離れた画面デザイン自体が保護対象として認められません。
2-3-1）、スクリーン、モニター、表示パネルなどの物品に表示される画面デザインであれば、意匠登録することができます。意匠に係る物品の名称は例えば「携帯電話機」又は「アイコン」が認められず、「スクリーンのアイコン」又は「携帯電話機のアイコン」であれば意匠に係る物品の名称として認められます。
2-3-2）、2013年1月1日以降に画面デザインで意匠登録出願をし、優先権を主張する場合、優先日が2013年1月1日以前のものは2013年1月1日を優先日とします。
2-4）、2013年1月1日以降は、部分意匠制度が導入されます。部品の全部又は部分の形状、模様、色彩又はこれらの結合（外観と呼ばれます）であって、視覚を通じて訴える創作は登録の対象となります。
2-4-1）、部分意匠を出願する場合、完全な物品という要件は不要であります。物理的に分離できない物品の部分又は分離できる物品は部分意匠として出願することが可能であります。
2-4-2）、同一出願人が全体意匠を出願した後、登録公告前に特徴ある部分を部分意匠として別途出願することが可能であります。
2-4-3）、2013年1月1日前に部分意匠として出願する便宜的措置として、同一出願人が2013年1月1日前に十分に表現できる各視図、例えば六面図、立体図を有する全体意匠の図面と、十分に表現できる各視図、例えば六面図、立体図を有する部分意匠の図面を一出願にまとめて提出し、2013年1月1日から3ヶ月以内に部分意匠の部分を部分意匠に変更することができます。部分意匠の（台湾）出願日は元の全体意匠の出願日であると見なされます。この場合、部分意匠の優先権主張は認められます。
2-5）、2013年1月1日前に本意匠に類似する意匠は連合意匠として出願しなければなりません。連合意匠の存続期間は、本意匠の存続期間と同時に満了します。本意匠が取り消された又は消滅した場合、連合意匠も共に取り消され又は消滅します。
2-6）、2013年1月1日以降は現行の連合意匠制度（日本の類似意匠制度に相当）が廃止され、関連意匠制度が導入されます。
2-6-1）、同一出願人が本意匠と同日又は同日後に出願した類似意匠に対して関連意匠として登録することが可能です。関連意匠として登録された意匠は独自の権利を行使することができます。関連意匠は本意匠の存続期間の終了に伴って消滅しますが、本意匠が取消又は年金未納により当然消滅した場合でも、関連意匠の意匠権は存続します。
2-6-2）、本意匠の登録公告前に関連意匠について出願しなければなりません。
2-6-3）、関連意匠に類似し、本意匠に類似しない意匠は関連意匠として出願することができません。
2-6-4）、関連意匠として出願した後、本意匠とは類似しないという拒絶理由が通知された場合、本意匠の登録公告前又は登録公告後に通常の意匠出願に変更することが可能です。
2-6-5）、関連意匠は単独で権利を主張することができ、かつ類似の範囲に及びます。
2-6-6）、関連意匠は本意匠と共に譲渡、信託、相続、使用許諾、又は質権の設定をしなければなりません。本意匠が取消又は消滅し、関連意匠が二つ以上依然として存続する場合、各関連意匠権がそれぞれ独立して譲渡、信託、相続、使用許諾、又は質権の設定をすることができず、全体として譲渡、信託、相続、使用許諾、又は質権の設定の対象となります。
2-7）、2013年1月1日以降は、組物の意匠として意匠登録を受けることができます。国際意匠分類表に記載された同一の類別に属する二以上の部品が慣習上組物として販売されたり、使用されたりする場合、一意匠として登録することが可能であります。
2-7-1）、権利行使について、構成部品ごとには権利を行使できず、組物全体としてのみ権利を行使できます。
2-7-2）、組物の意匠として意匠を出願した後、登録公告前に特徴ある部品は全体意匠として別途出願することも可能であります。更に、該全体意匠における特徴ある部分を部分意匠として別途出願することも可能であります。
2-7-3）、2013年1月1日以降に組物の意匠で意匠登録出願をし、優先権を主張する場合、優先日が2013年1月1日以前のものは2013年1月1日を優先日とします。
3、特許（発明）、実用新案、意匠（設計）における「実施」の定義を明確にさせます。「実施」とは製造、販売の申し出（offer to sell）、販売、使用又は前記の目的のために輸入を行うことを指します。
4、2013年1月1日以降は、特許（発明）、意匠の新規性喪失の例外規定の適用範囲を拡大して、新規性から新規性と進歩性（意匠は創造性）に及びます。また、出願人は自分の意思で刊行物に発表した場合、発表後6ヶ月以内であれば、発明、意匠の新規性喪失の例外の優遇措置を受けることができることが新設されます。
5、2013年1月1日以前に明細書とは「特許請求の範囲」と「要約」を含むものを指しますが、2013年1月1日以降は「特許請求の範囲」と「要約」を明細書から独立させます。
6、外国語書面出願の明細書補正について、
6-1）、英文明細書、日本語明細書を含む外国語明細書自体の訂正・補正は認められませんが、明細書の（台湾繁体字）中国語訳文の訂正・補正は認められるとともに、（台湾繁体字）中国語訳文の誤訳訂正も認められます。誤訳訂正は認められるか否かの判断は外国語明細書を比較基準として行います。
6-2）、明細書の（台湾繁体字）中国語訳文の訂正・補正は出願時の明細書、図面又は特許請求の範囲の（台湾繁体字）中国語訳文に開示された範囲を超えてはならないが、明細書の（台湾繁体字）中国語訳文の誤訳訂正は出願時の外国語明細書、図面又は特許請求の範囲に開示された範囲を超えてはならないが、出願時に提出した明細書、図面又は特許請求の範囲の（台湾繁体字）中国語訳文に開示された範囲を超えても誤訳訂正が認められます。
6-3）、前記訂正・補正、誤訳訂正は特許取得後の更正手続にも適用されます。
7、権利の回復措置
7-1）、2013年1月1日以降は、出願人が故意ではなく、出願時に優先権を主張しない場合など、最先の優先日から16 ヶ月以内に優先権主張の回復を申請することができます。
7-2）、2013年1月1日以降は、特許査定された発明に対し、査定書が送達された後3ヶ月以内に、出願人が故意でなく、証書代及び第1年年金を納付しない場合、納付期間満了後6ヶ月以内に登録料の倍額を追納すれば権利を回復することが可能であります。
7-3）、2013年1月1日以降は、2年目以降の特許料は納付期間に納付しない場合、特許権者が故意でなく、追納期間満了後1年以内に3倍の特許料を追納すれば権利を回復することが可能であります。
8、分割出願可能な時期
8-1）、2013年1月1日以前に分割出願可能な時期は「再審査査定前」であります。つまり、審査係属中の出願のみは分割出願を行うことができます。
8-2）、2013年1月1日以降は、分割出願可能な時期は「再審査査定前」又は「初審査定書送達後30日以内」であります。つまり、審査係属中という制限が緩和され、初審査定がされたのを受けて、登録公告前に分割出願を行うことができますが、再審査査定後の分割出願は認められません。
9、2013年1月1日以降は、出願人が自発的に明細書を補正できる時期の制限が削除されます。しかしながら、審査の遅延を防ぐために、「最終通知」制度が導入されます。出願人は「最終通知」を受け取った後に、期限内に請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のみを行うことができます。
10、医薬品や農薬品に係る特許権の存続期間の延長登録に関する規定が修正されます。
10-1）、2013年1月1日以前に医薬品、農薬品又はその製造方法に係る特許権の実施は許可証を取得する必要があり、該許可証取得のために、特許公告後に2年以上を要する場合、特許権の存続期間を2年から5年までの延長を申請することができます。前記延長の許可期間は中央目的事業主務官庁から許可証を取得するための期間を超えてはならないと規定されています。
10-2）、2013年1月1日以降は、許可証取得のために、特許公告後に2年以上を要するという制限が解除されます。特許権の存続期間延長の上限は5年とします。なお、存続期間の延長が許可された特許権の範囲は許可証に記載されている有効成分、用途のみに限定されます。特許権の存続期間満了時に特許主務官庁による存続期間延長可否の審査はまだ査定していない場合、存続期間はすでに延長されたと認められます。但し、延長が認められない場合、元の特許権の存続期間満了までとします。
11、特許権の効力が及ばない事項の追加修正
2013年1月1日以降は、下記の特許権の効力が及ばない事項が追加修正されます。
ア）、商業の目的ではない未公開の行為
イ）、改正後の特許法の規定により特許権が消滅した後に、特許権者が特許権効力を回復して公告する前に善意で実施し、或いはすでに必要な準備を完了したもの
ウ）、薬事法で定められた薬物検査登録許可又は国外で薬物販売許可の取得を目的として行われた研究、試験及びその必要な行為
なお、特許権消耗の原則は国際的消尽原則を採用することを明確にさせます。
12、専用実施権に関する規定を明確にさせます
12-1）、2013年1月1日以前に「専用実施権」と「通常実施権」との区別記載がありません。実務面では、特許権者と実施権を受ける者との実施権許諾契約書に「専用実施権」を明記すれば、専用実施権としての効力は発生します。
12-2）、2013年1月1日以降は、専用実施権に関する規定を明確にさせます。実施権をより明確にし、「専用実施権」と「通常実施権」を明確に記載します。専用実施権は特許主務官庁に登録しなければ第三者に対抗することができません。専用実施権者は実施権許諾の範囲内において特許権者及び第三者が該発明を実施することを排除することができます。専用実施権者は第三者に対してその実施権を許諾する権利を再許諾することができます。通常実施権者は特許権者又は専用実施権者の同意を得なければ、第三者に対してその実施権を許諾する権利を再許諾することができません。
13、無効審判に関する規定の修正
2013年1月1日以降は、下記の無効審判に関する規定が修正されます。
ア）、特許主務官庁は職権審査により特許権を取り消す制度が廃止されます。
イ）、同一特許に対する複数の無効審判を併合して審査することは認められます。
ウ）、特許主務官庁は職権により当事者が主張しない理由を審理することができます。
エ）、無効審判の審決は各請求項についてそれぞれ行い、一部の請求項に対して無効審判を請求することができます。
オ）、無効審判の審決が下される前に請求人は該無効審判を取り下げることが認められます。
14、強制実施許諾に関する規定の修正
2013年1月1日以降は、強制実施許諾に関する規定が修正されます。
ア）、国家の緊急事態に対応するため、特許主務官庁は緊急命令又は中央目的事業主務官庁の通知により強制実施許諾を行うことができます。
イ）、公益を増進するための非営利の実施が必要である場合、特許主務官庁は請求により強制実施許諾を行うことができます。
ウ）、特許権の実施行為は他の特許権の侵害となりますが、他の特許権より格別の経済的意義を持つ重要な技術の改良の場合、特許主務官庁は請求により強制実施許諾を行うことができます。
エ）、裁判所の判決又は公正取引委員会の処分により、特許権者の不正競争行為が認められた場合、特許主務官庁は請求により強制実施許諾を行うことができます。
オ）、強制実施許諾の査定は強制実施許諾の理由、範囲、期間及び支払うべき補償金を記入しなければなりません。
15、発展途上国の公衆衛生に関する規定の新設
発展途上国国内の公衆衛生危機を解決するために、特許権のために必要な医薬品を取得することができない場合、特許主務官庁は申請により強制実施許諾を行うことができます。
16、特許侵害に関する規定の修正
2013年1月1日以降は、特許侵害に関する規定が修正されます。
ア）、侵害の排除又は侵害防止の請求は侵害者に特許権侵害についての主観的な故意や過失があることを必要としないが、損害賠償の請求は侵害者に主観的な故意や過失があることを必要とします。
イ）、損害賠償額算定について、特許権実施料を損害賠償額として算定することができる規定が追加されます。
ウ）、侵害行為により特許権者の業務上の信用を害された場合、別途相当金額の賠償を請求することができる規定が削除されます。
エ）、侵害行為が故意である場合、損害額の3倍の損害賠償額を支払う規定が削除されます。
オ）、特許に係るものに特許証番号の表示を付しない場合、損害賠償を請求する際、侵害者が特許に係るものであることを知った又は知り得ることを立証しなければなりません。
17、実用新案登録に関する規定の修正
17-1）、2013年1月1日以降は、同一出願人が同一の発明又は考案をもって同日に特許と実用新案とを出願
し、特許査定の前にすでに実用新案出願が登録された場合、特許と実用新案を一つ選択しなければなりませ
ん。特許を選択した場合、実用新案権は最初から存在しなかったものとなります。実用新案を選択した場合、
特許を与えません。
17-2）、2013年1月1日以降は、実用新案に対する修正は出願時の明細書、実用新案登録請求の範囲、図面
に開示された範囲を明らかに超えた場合、登録を受けることができません。
◆台湾改正商標法は2012年7月1日に施行されます。改正商標法の要点は次のとおりです。
1、商標の使用行為の態様の明確化
販売と目的として、デジタル画像・音声、電子媒体、インターネットなどを通じて、商品又は役務を所持し、陳列し、販売し、輸出又は輸入することは商標の使用行為に該当します。
2、商標法保護の客体の拡大
2-1）、本来登録が認められないものは保護の対象となっています。従来の文字、図形、記号、色彩、立体形状から構成されているものから、動き、ホログラム、位置、音など識別力があるものまで登録が認められます。
2-2）、商標図形ははっきり、明確、完全、客観的、持久及び分かりやすい方式で表現しなければなりません。例えば、経時的変化を持つ音の商標について、五線譜又は略譜による表現方式は文字説明よりも、特徴を明確かつ分かりやすく説明できます。また、動く商標の登録出願では、商標の描写、動き画像を格納した情報記録媒体であるディスクの提出が必要です。
2-3）、匂い、香り、味覚、触覚などの視認できないタイプの商標の登録出願が可能です。
3、国際展覧会優先権主張の導入
3-1）、台湾政府が主催又は承認する台湾国内で開催されるものに限られない国際展覧会で、登録出願した商標の商品又は役務を出展して展覧会優先権を主張する場合、
出展日が2012年7月1日前6ヶ月以内のものは2012年7月1日を優先日とします。
出展日が2012年7月1日以降であって、出展日後6ヶ月以内に優先権を主張するものは出展日を出願日とします。但し、国際展覧会優先権を主張する場合、国際的優先権を主張することはできません。
3-2）、登録出願と同時に国際展覧会優先権主張の声明を記入し、台湾出願日から3ヶ月以内に、国際展覧会の名称、展覧会会場の所属国など展覧会に関する証明書類を提出する必要があります。
4、拒絶理由先行通知書に対する意見申述に係る猶予期間
4-1）、2012年7月1日前に拒絶理由先行通知書に対する意見申述の期限は30日で、外国の出願人の場合、期間を2ヶ月延長することができます。
4-2）、2012年7月1日以降は、外国の出願人の場合、拒絶理由先行通知書に対する意見申述の期限は2ヶ月で、期間を2ヶ月延長することができます。2回目の延長申請は審査官の裁決により可否が決定されます。
5、登録料の分割納付の廃止
2012年7月1日前に2回に分けて登録料を納付することができますが、2012年7月1日以降は10年分の登録料を一括納付しなければなりません。
6、登録料納付遅延の回復措置
6-1）、2012年7月1日前に納付期限内に登録料を納付しない場合、原査定は失効します。
6-2）、2012年7月1日以降は、納付期限内に登録料を納付しない場合、故意でない旨を釈明し、納付期間満了後6ヶ月以内に登録料の倍額を追納すれば権利を回復することが可能です。
7、指定商品又は指定役務の分割・縮減が可能な時期
7-1）、2012年7月1日前に登録を拒絶された商標、或いは異議申立て・評定（登録無効審判）・廃止（登録取消審判）が成立し、行政的救済に係属している商標に対して指定商品・役務を分割・縮減することができます。
7-2）、2012年7月1日以降は、まだ拒絶査定されない商標、或いは異議申立て・評定（登録無効審判）・廃止（登録取消審判）に係属中の商標に対して指定商品・役務を分割・縮減する場合、処分前に行わなければなりません。
8、評定（登録無効審判）・廃止（登録取消審判）請求に対する使用証拠の提出
8-1）、2012年7月1日前に先登録商標の商標権者は後登録の商標に対して評定（登録無効審判）・廃止（登録取消審判）を請求する場合、先登録商標の使用証拠を提出する必要はありません。
8-2）、2012年7月1日以降は、登録後既に満3年経過している先登録商標の商標権者は後登録の商標に対して評定（登録無効審判）・廃止（登録取消審判）を請求する場合、評定（登録無効審判）・廃止（登録取消審判）の請求前3年間に使用していることを立証する必要があります。
9、専用権放棄声明
9-1）、2012年7月1日前に識別性のない文字・図形で構成されている部分に対して専用権放棄を声明しなければなりません。例えば、商標「旭日不動産」で不動産の賃貸・売買に使用される場合、「不動産」に対して専用権放棄を声明しなければなりません。
9-2）、2012年7月1日以降は、商標権の範囲について疑義が生じた識別性のない文字・図形で構成されている部分のみに対し、専用権放棄を声明しなければなりません。例えば、商標「旭日不動産 影音看屋」（「影音看屋」は動画音声で部屋を見るという意味です）で不動産の賃貸・売買に使用される場合、「不動産」は商標権の範囲に疑義が生じる恐れがありませんので、「不動産」に対して専用権放棄を声明する必要はありません。しかしながら、同業他社は「影音看屋」を使用する可能性が高く、独占的に使用されれば、公正な競争を阻害する恐れがありますので、商標権の範囲に疑義が生じた「影音看屋」に対して専用権放棄を声明しなければなりません。
10、併存登録に関する規定の新設
2012年7月1日前に同一又は類似の商品・役務について、既登録商標又は先出願商標と同一又は近似する商標は関連消費者に混同誤認を生じさせる恐れがある場合、既登録商標又は先出願商標の所有者の同意を得て登録を受けることができます。2012年7月1日以降は、不当な事実は明らかである、例えば裁判所による禁止処分を受けた既登録商標又は先出願商標に対し、既登録商標の商標権者又は先出願商標の出願人が第三者の商標併存登録に同意することが認められない規定は追加されます。
11、専用使用権と通常使用権に関する規定の新設
11-1）、2012年7月1日以降は、他人に専用使用権又は通常使用権を許諾することができる規定を新設します。
11-2）、商標権者から専用使用権の使用許諾を受けた者は許諾範囲内で、商標権者及び第三者の登録商標使用を排除することができ、商標権が侵害された場合、自己名義で権利を行使することができ、他人に使用権を再許諾することができます。
11-3）、専用使用権又は通常使用権の許諾は台湾知的財産局に登録しなければ、第三者に対抗することができません。
12、商標権侵害に関する規定の改正
12-1）、商標権の排他的効力の範囲の明確化
2012年7月1日以降は、販売を目的として、同一又は類似の商品又は役務において、登録商標と同一又は類似の商標を使用することにより、関連する消費者に混同誤認を生じさせる恐れがある場合、商標権の侵害となります。
12-2）、商標権侵害の責任の主観的要件の明確化
2012年7月1日以降は、商標権侵害の排除及び防止請求権は行為者に主観上の故意又は過失があることを必要としませんが、損害賠償請求権は行為者に主観上の故意又は過失があることを必要とします。
12-3）、商標権侵害に該当する行為に関する規定の改正
著名商標の識別性又は信用・名誉を減損する恐れがあることを立証すれば、商標権の侵害に該当します。なお、商標権を侵害する恐れがあることを明らかに知りながら、商品又は役務と結合していないラベル、タグ、包装容器、或いは役務に関するものを製造し、所持し、陳列し、販売し、輸出又は輸入するなどの行為は商標権の侵害に該当します。
12-4）、電子媒体又はインターネットを通じて、商標権侵害品を販売し、意図的に販売する行為は商標権の侵害に該当します。
12-5）、証明標章権の侵害に関する刑罰規定の新設
証明標章は商標に比べて更に高い公益性を有し、証明標章権の侵害が社会公衆にもたらす被害は商標よりも大きく可能性がありますので、証明標章権の侵害に関する刑罰規定を新設します。
12-6）、税関における水際措置に関する規定の新設
税関当局が職権により押収、商標権侵害品の情報提供などの措置を講じることができます。押収物の機密資料の保護を損なわない状況下で、申請人又は被押収者の申請により、税関当局は押収物の検査を許可し、商標権侵害品であるか否かの確認に協力し、商標権者に商標権侵害品に関する情報を提供できます。
13、産地証明標章と産地団体商標に関する規定の新設
13-1）、証明標章の出願人は地理名称を含む、或いは地理区域を示すことのできる標識を産地証明標章として登録することができます。
13-2）、団体商標の出願人は地理名称を含む、或いは地理区域を示すことのできる標識を産地団体商標として登録することができます。
14、商標の合理的使用の範囲の改正
商業取引の慣習に合致する誠実且つ信用できる方法で、商品又は役務の品質、性質、特性、機能に関する説明を表示し、商標として使用しない場合は商標の合理的使用に該当し、商標権の効力による拘束を受けません。
◆台湾と日本との間の「台湾日本民間投資取り決め」の締結及び「台湾日本産業連携推進オフィス」の設置に伴い、台湾と日本との間の特許審査ハイウェイ（PPH）試行計画が2012年5月1日より2年間行われます。
1、特許審査ハイウェイ（PPH）に基づく加速審査の申請要件
1-1）、台湾出願に対応する優先権主張の基礎出願（日本出願、或いは日本出願を優先権主張の基礎出願とするPCT出願）が既に日本国特許庁の実体審査を経て、少なくとも1つ又は複数の請求項が特許可能と判断された場合
1-2）、台湾出願の請求項の範囲が日本出願の請求項と同じであり、或いは日本出願の請求項の範囲より狭い場合、
1-3）、特許審査ハイウェイ（PPH）に基づく加速審査を提出できる時期は実体審査段階移行通知書の送達後、最初の審査意見通知書の送達前であります。特許審査ハイウェイ（PPH）に基づく加速審査を提出する際、まだ公開されない出願に対して早期公開を請求しなければなりません。
1-4）、特許審査ハイウェイ（PPH）に基づく加速審査請求の台湾政府料金は不要ですが、早期公開請求は台湾政府料金台湾元1000元（日本円約2700円）を納付しなければなりません。
2、特許審査ハイウェイ（PPH）に基づく加速審査の必要提出書類
2-1）、日本の特許庁が発した全てのオフィスアクションの写し及びその翻訳文。但し、台湾知的財産局は日本の特許庁の「高度産業財産ネットワーク(AIPN: Advanced Industrial Property Network)」を通じて全てのオフィスアクション及びその機械翻訳文を取得することが可能であれば、オフィスアクションの写し及びその翻訳文の提出は不要です。
2-2）、特許可能と判断された日本出願の全ての請求項の写し及びその翻訳文。但し、台湾知的財産局は日本の特許庁の「高度産業財産ネットワーク(AIPN: Advanced Industrial Property Network)」を通じて全ての請求項及びその機械翻訳文を取得することが可能であれば、特許可能と判断された全ての請求項の写し及びその翻訳文の提出は不要です。
2-3）、日本の特許庁の審査官が引用した引例の写し。引例が特許文献であれば、提出は不要ですが、非特許文献の引例を提出する必要があります。
2-4）、台湾出願の請求項が特許可能と判断された日本出願の請求項と十分に対応していることを示す請求項対応表。
3、関係書類を全部整えてから1.1ケ月以内に特許審査ハイウェイ（PPH）に基づく加速審査の結果が発行されます。
◆台湾と中国の「海峡両岸知的財産権保護協力協定」の締結により、2010年11月22日以降に台湾と中国両者が特許、商標、植物品種権の優先権を相互に承認し合いました。日本の出願人は中国出願を基礎として台湾で優先権を主張し、或いは台湾出願を基礎として中国で優先権を主張する場合、以下2項目の条件に合致する必要があります。
1、2010年9月12日（9月12日含み）以降の出願
2、2011年11月22日以降に優先権を主張すること
前記優先権主張は2010年9月12日以前の基礎出願に遡って行うことができません。
◆2011年2月1日以降の商標出願は改定後の商標料金納付準則に適用されます。
ア）、改定後（2011年2月1日以降の出願適用）の台湾商標料金納付準則第2条は
「一、登録出願の費用は下記の通りであります。
商標又は団体商標登録出願は指定使用の商品又は役務の区分により合計し、各類の金額の計算方法は下記の通りであります。
（一）指定使用が第1類∼第34類の場合、同類の商品において指定使用の商品の個数が20個以下の場合、1類ごとに台湾元3000元、商品は20個を超える場合、1個ごとに台湾元200元を追納します。
（二）指定使用が第35類∼第45類の場合、1類ごとに台湾元3000元。但し、第35類の特定商品の小売サービス（備考：小売卸売）に指定使用され、5個を超える場合、1個ごとに台湾元500元を追納します。
二、団体標章又は証明標章の場合、1件ごとに台湾元5000元、」と規定されています。
例えば、区分は第3類、指定商品の個数は25個の場合、台湾元3000（基本料金）+5*200（5個超過分の追納料金）＝4000元となります。
第35類の小売卸売の指定役務名について、「被服の小売卸売」、「飲料の小売卸売」、、、、「家具の小売卸売」などの「**の小売卸売」計8個を記入する場合、台湾元3000（基本料金）+3*500（3個超過分の追納料金）＝4500元となります。
現行（2011年2月1日以前の出願適用）の台湾商標料金納付準則第2条は
「一、登録出願の費用は下記の通りであります。
商標又は団体商標登録出願は指定使用の商品又は役務の区分により合計し、各類の金額の計算方法は下記の通りであります。
（一）指定使用が第1類∼第34類の場合、同類の商品において指定使用の商品の個数が20種以下の場合、1類ごとに台湾元3000元、商品の個数が21種以上、60種以下の場合、1類ごとに台湾元5000元、商品の個数が61種以上の場合、1類ごとに台湾元9000元
（二）指定使用が第35類∼第45類の場合、1類ごとに台湾元3000元、
二、団体標章又は証明標章の場合、1件ごとに台湾元5000元、」と規定されています。
イ）、改定後（2011年2月1日以降の出願適用）の台湾商標料金納付準則第4条は「更新登録通知書の送達前に更新登録の申請を取り下げた場合、更新登録料の返還請求をすることができます。」についての新たな規定が追加されています。
◆最新の台湾特許法改正案は2009年12月11日に台湾国会に送られ、2011年3月現在は台湾国会で審議中です。
特許法改正案の概要
1、特許（発明）、実用新案、意匠（設計）は「創作」という名称に統一されます。
2、意匠に対応する台湾の用語「新式様専利」を「設計専利(design)」に変更します。
2-1）、改正後の特許法では、部分意匠制度が導入されます。部品の全部又は部分の形状、模様、色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて訴える創作は登録の対象となります。
なお、全体意匠を出願した後、登録公告前に特徴ある部分を部分意匠として別途出願することも可能であります。
2-2）、改正後の特許法では、アイコン、ウェブサイトのユーザーインタフェース（GUI）は意匠登録することができます。
2-3）、現行の連合意匠制度（類似意匠制度）が廃止されます。現行の特許法では、本意匠に類似する意匠は連合意匠として出願しなければなりません。連合意匠の存続期間は、本意匠の存続期間と同時に満了します。本意匠が取り消された又は消滅した場合、連合意匠も共に取り消され又は消滅します。
2-4）、改正後の特許法では、関連意匠制度が導入されます。同一出願人が本意匠と同日又は同日後に出願した類似意匠に対して関連意匠として登録することが可能です。関連意匠として登録された意匠は独自の権利を行使することができます。関連意匠は本意匠の存続期間の終了に伴って消滅しますが、本意匠が取消又は年金未納により当然消滅した場合でも、関連意匠の意匠権は存続します。
2-5）、改正後の特許法では、組物の意匠制度が導入されます。国際意匠分類表に記載された同一の類別に属する二以上の部品が慣習上組物として販売されたり、使用されたりする場合、一意匠として登録することが可能であります。また、権利行使について、構成部品ごとには権利を行使できず、組物全体としてのみ権利を行使できます。
なお、組物の意匠として意匠を出願した後、登録公告前に特徴ある部品は全体意匠として別途出願することも可能であります。更に、該全体意匠における特徴ある部分を部分意匠として別途出願することも可能であります。
3、特許（発明）、実用新案、意匠（設計）における「実施」の定義を明確にさせます。「実施」とは製造、販売の申し出（offer to sell）、販売、使用又は前記の目的のために輸入を行うことを指します。
4、特許（発明）の新規性喪失の例外規定の適用範囲を拡大して、新規性から新規性と進歩性（意匠の場合は創造性）に及びます。
5、現行の特許法では、明細書とは「特許請求の範囲」と「要約」を含むものを指しますが、改正後の特許法では、「特許請求の範囲」と「要約」を明細書から分離独立させます。
6、改正後の特許法では、動植物特許に関する出願が認められます。動植物を生み出す主な生物学的方法は特許を受けることができないという制限が解除されます。
7、外国語書面出願の明細書補正について、
英文明細書、日本語明細書を含む外国語明細書自体の訂正・補正は認められませんが、明細書の中国語訳文の訂正・補正は認められるとともに、中国語訳文の誤訳訂正も認められます。明細書の中国語訳文の訂正・補正は出願時の明細書、図面又は特許請求の範囲の中国語訳文に開示された範囲を超えてはならないが、明細書の中国語訳文の誤訳訂正は出願時の外国語明細書、図面又は特許請求の範囲に開示された範囲を超えてはならないが、出願時の明細書、図面又は特許請求の範囲の中国語訳文に開示された範囲を超えても誤訳訂正が認められます。前記訂正・補正、誤訳訂正は特許取得後の更正手続にも適用されます。
例えば、日本語明細書には「アナログ（中国語は類比）」を記載しますが、中国語訳文は數位（デジタル）と誤訳しました。現行の特許法第49条の補正の規定と第64条第2項の「誤記の事項の訂正」の規定に基づき誤訳を訂正することが認められません。改正後の特許法では、前記明細書の中国語訳文「類比（アナログ）」-「數位（デジタル）」の誤訳訂正は認められます。
8、改正後の特許法では、出願時に優先権を主張しない、或いは特許年金未納による権利失効の場合、権利回復請求は認められます。
9、現行の特許法では、分割出願可能な時期は「再審査査定前」であります。つまり、審査係属中の出願のみは分割出願を行うことができます。改正後の特許法では、分割出願可能な時期は「再審査査定前」又は「初審査定書送達後30日以内」と修正されます。つまり、審査係属中という制限が緩和され、初審査定がされたのを受けて、登録公告前に分割出願を行うことができます。しかしながら、再審査査定後の分割出願は認められません。
10、改正後の特許法では、出願人が自発的に明細書を補正できる時期の制限が削除されます。しかしながら、審査の遅延を防ぐために、「最終通知」制度が導入されます。出願人は「最終通知」を受け取った後に、期限内に請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のみを行うことができます。
11、改正後の特許法では、医薬品や農薬品に係る特許権の存続期間の延長登録に関する規定が修正されます。現行の特許法では、医薬品、農薬品又はその製造方法に係る特許権の実施は許可証を取得する必要があり、該許可証取得のために、特許公告後に2年以上を要する場合、特許権の存続期間を2年から5年までの延長を申請することができます。前記延長の許可期間は中央目的事業主務官庁から許可証を取得するための期間を超えてはならないと規定されています。
改正後の特許法では、許可証取得のために、特許公告後に2年以上を要するという制限が解除されます。特許権の存続期間延長の上限は5年とします。なお、存続期間の延長が許可された特許権の範囲は許可証に記載されている有効成分、用途のみに限定されます。特許権の存続期間満了時に特許主務官庁による存続期間延長可否の審査はまだ決定していない場合、存続期間はすでに延長されたと認められます。
12、改正後の特許法では、下記の特許権の効力が及ばない事項が追加されます。
ア）、商業の目的ではない未公開の行為
イ）、改正後の特許法第72条の規定により特許権が消滅した後に、特許権者が特許権効力を回復して公告する前に善意で実施し、或いはすでに必要な準備を完了したもの
ウ）、薬事法で定められた薬物検査登録許可又は国外で薬物販売許可の取得を目的として行われた研究、試験及びその必要な行為
なお、特許権消耗の原則は国際的消尽原則を採用することを明確にさせます。
13、改正後の特許法では、専用実施権に関する規定を明確にさせます。現行の特許法と特許審査基準では、「専用実施権」と「通常実施権」との区別記載がありません。実務面では、特許権者と実施権を受ける者との実施権許諾契約書に「専用実施権」を明記すれば、専用実施権としての効力は発生します。改正後の特許法では、実施権をより明確にし、「専用実施権」と「通常実施権」を明確に記載します。
14、改正後の特許法では、下記の無効審判に関する規定が改正されます。
ア）、特許主務官庁は職権審査により特許権を取り消す制度が廃止されます。
イ）、同一特許に対する複数の無効審判を併合して審査することは認められます。
ウ）、特許主務官庁は職権により当事者が主張しない理由を審理することができます。
エ）、一部の請求項に対して無効審判を請求できる制度が導入されます。
オ）、無効審判の審決が下される前に請求人は該無効審判を取り下げることが認められます。
15、改正後の特許法では、強制実施許諾に関する規定が改正されます。
ア）、国家の緊急事態に対応するため、特許主務官庁は緊急命令又は中央目的事業主務官庁の通知により強制実施許諾を行うことができます。
イ）、公益を増進するための非営利の実施が必要である場合、特許主務官庁は請求により強制実施許諾を行うことができます。
ウ）、特許権の実施行為は他の特許権の侵害となりますが、他の特許権より格別の経済的意義を持つ重要な技術の改良の場合、特許主務官庁は請求により強制実施許諾を行うことができます。
エ）、品種権者は品種権を利用するために、他人のバイオ特許を実施する必要があり、該バイオ特許より格別の経済的意義を持つ重要な技術の改良の場合、特許主務官庁は請求により強制実施許諾を行うことができます。
オ）、裁判所の判決又は公正取引委員会の処分により、特許権者の不正競争行為が認められた場合、特許主務官庁は請求により強制実施許諾を行うことができます。
16、発展途上国国内の公衆衛生危機を解決するために、特許権のために必要な医薬品を取得することができない場合、特許主務官庁は強制実施許諾を行うことができます。
17、特許侵害に関する規定が修正されます。
ア）、侵害の排除又は侵害防止の請求は侵害者に特許権侵害についての主観的な故意や過失があることを必要としないが、損害賠償の請求は侵害者に主観的な故意や過失があることを必要とします。
イ）、損害賠償額算定について、特許権実施料を損害賠償額として算定することができます。
ウ）、侵害行為により特許権者の業務上の信用を害された場合、別途相当金額の賠償を請求することができる規定が削除されます。
エ）、侵害行為が故意である場合、損害額の3倍の損害賠償額を支払う規定が削除されます。
18、特許出願と実用新案出願との二重出願は明確に禁止されます。同一出願人が同一の発明又は考案をもって同日に特許と実用新案を出願し、特許査定の前に既に実用新案出願が登録された場合、特許と実用新案を一つ選択しなければなりません。
◆特許加速審査制度について
台湾知的財産局の人手不足のために2009年12月までは特許の未済案件は12.9万件に達しています。未済案件数を減らす解決策の一つとして、「特許加速審査制度」が導入されました。諸外国、特に日米欧特許審査ハイウェイ制度の精神を取り入れ、外国で特許査定になった出願の審査結果を台湾での審査に反映させ、早期に審査を行い、審査の迅速化を図ります。2009年1月1日より「特許加速審査制度」が試行導入され、2010年1月1日より正式導入されます。
下記の3つの理由があれば「特許加速審査制度」を適用することができます。
1、外国の対応出願がすでに該当外国特許庁の実体審査を経て特許査定がされた場合
台湾出願に対応する優先権基礎案はすでに外国で特許査定がされた場合、特許加速審査を適用することができますが、台湾で優先権を主張しない対応出願は特許請求の範囲に記載された発明はすでに該当対応出願の明細書または図面に記載されれば、特許加速審査を適用することもできます。
必要提出書類は
ア）、特許加速審査申請書。
イ）、外国特許庁がすでに査定公告した特許請求の範囲及びその中国語訳文又は外国特許庁による査定通知の写し或いはまもなく公告される特許請求の範囲及びその中国語訳文。前記特許請求の範囲と台湾の対応出願の特許請求の範囲との間に不一致箇所がある場合、不一致箇所に対して説明しなければなりません。
ウ）、外国特許庁によるすべての審査意見書・検索報告及びその中国語訳文（英語の審査意見書・検索報告の場合、中国語訳文の添付は不要）。前記審査意見書・検索報告において外国の対応出願が新規性・進歩性違反を指摘された非特許文献の写し（特許文献の場合は添付不要）
関係書類を全部整えてから6ケ月以内に最初の審査結果が発行されます。
2、外国の対応出願がすでに日米欧の特許庁による審査意見書・検索報告を経ましたが、まだ特許査定されない場合
出願人は少なくとも第1回の審査意見書及び検索報告（欧州特許庁による検索報告又はPCTで指定した日米欧の特許庁による検索報告を含みます）を提出すべきであります。検索報告がない場合、提出しなくて良いであります。
必要提出書類は
ア）、特許加速審査申請書。
イ）、日米欧の特許庁による審査意見書に記載の特許請求の範囲及びその中国語訳文。前記特許請求の範囲と台湾の対応出願の特許請求の範囲との間に不一致箇所がある場合、不一致箇所に対して説明しなければなりません。
ウ）、日米欧の特許庁による審査意見書・検索報告の写し及びその中国語訳文（英語の審査意見書・検索報告の場合、中国語訳文の添付は不要）。前記審査意見書・検索報告において外国の対応出願が新規性・進歩性違反を指摘された場合、該外国の対応出願が特許性を有する理由を説明する必要があります。前記新規性・進歩性違反を指摘された非特許文献の写し（特許文献の場合は添付不要）
関係書類を全部整えてから6ケ月以内に最初の審査結果が発行されますが、日米欧の特許庁による審査意見書に記載の特許請求の範囲と台湾の対応出願の特許請求の範囲との間に不一致箇所がある場合、関係書類を全部整えてから9ケ月以内に最初の審査結果が発行されます。
3、商業のために実施する場合、
出願人が商業のために特許出願に係る発明を実施しようとする場合、特許加速審査申請書及び商業実施に関する証明書類を提出すれば、関係書類を全部整えてから9ケ月以内に最初の審査結果が発行されます。
特許加速審査を提出できる時期は「本局がまもなく実体審査を行う」という実体審査段階移行通知書送達後、或いは再審査後であります。台湾の対応出願がすでに台湾知的財産局の審査により特許請求の範囲を減縮するよう要求され、かつ出願人がすでに特許請求の範囲を減縮した場合、特許請求の範囲が減縮済みの台湾の対応出願の特許請求の範囲より広い外国で特許査定された対応出願を以って加速審査を請求することができません。なお、特許加速審査請求の台湾政府料金は不要です。
◆台湾では、2008年8月26日に電子出願制度が導入されました。現時点では電子出願でできる手続きは特許、実用新案、意匠、商標の出願関連手続きで、電子出願の受付時間は月曜日∼金曜日8：00-17：00ですが、土曜日・日曜日・祝日は休みです。365日24時間受付可能な体制を構築する予定がありますが、施行日は未定です。
電子出願制度が導入されても従来の紙出願制度と電子出願制度がまだ並存しています。電子出願制度の導入により、従来の紙出願と比べて下記の問題点の発生が想定されます。
1、従来の紙出願では、台湾知的財産局の各窓口に特許（又は商標）出願願書を差し出した後、直ちに発明（又は商標）の名称、出願番号、出願日、納付金額などを記載する領収書を発行してくれます。電子出願では、特許（又は商標）出願願書を差し出した後、出願番号、出願日などを記載する通知書は提出者の電子メールアドレスに送信しますが、納付金額を含む領収書は出願日から5-7日後に発行されます。正式の領収書の取得は従来の紙出願より5~7日遅れます。
2、従来の紙出願では、出願日に優先権証明書を提出できなくて後で提出する場合、台湾知的財産局の各窓口では「優先権証明書の提出済みの受領証明」の押印をしてくれます。電子出願では、出願日に優先権証明書を提出できなくて後で郵送で提出する場合、「優先権証明書の提出済みの受領証明」の押印がなく、提出日からおよそ3週間後に紙の「提出済みの通知書」を発行してくれます。
3、従来の紙出願では、出願日に委任状、譲渡証、明細書の中文訳文を提出できなくて後で提出する場合、台湾知的財産局の各窓口では「委任状、譲渡証、明細書の中文訳文の提出済みの受領証明」の押印をしてくれます。電子出願では、委任状、譲渡証、明細書の中文訳文などの書類を電子データに変換して提出することが可能ですが、提出後、提出者の電子メールアドレスに送信する通知書にはそれぞれ「委任状提出」、「譲渡証提出」、「明細書の中文訳文提出」という記載がありません。提出日からおよそ3週間後に紙の「提出済みの通知書」を発行してくれます。
「専利師」資格を取得するための専利師試験概要：
論文式筆記試験：実施時期毎年8月
受験科目：
1、特許法規（特許法、パリ条約特許部分、貿易に係る知的財産権協定特許部分、特許協力条約（PCT）を含む）
2、行政手続法及び行政訴訟法
3、特許審査基準及び特許出願実務
4、専門英語又は専門日本語から1科目選択
5、 微積分及び物理及び化学
6、工業力学、バイオテクノロジ-、電子学、物理化学、基本設計（工業設計）から1科目選択、50点以上が必要
合格は平均60点以上とされています。
受験科目は特許実務と関係のない微積分などを含み、過酷だと指摘する声が相次いでいます。
すでに「専利代理人」という名義で特許、意匠、商標出願業務を代理する専利代理人は引き続き代理業務を続行することができます。なお、
◆2007年1月と3月に知的財産専門裁判所の創設に係る「知的財産裁判所組織法」及び「知的財産案件審理法」両法案が台湾国会で可決され、2008年7月1日より、知的財産裁判所が発足し、裁判所は台湾新幹線板橋駅が入居するビルの3-5階にあります。
知的財産裁判所の成立に合わせて、特許・商標に係る行政処分に対する行政救済の段階は現行の4級4審（備考1）から3級3審（備考2）に変更します。（施行予定日は未定）
*備考1：それぞれ第1級の事実審は（経済部）知的財産局で、第2級の事実審は経済部訴願委員会で、第3級の事実審と法律審は高等行政裁判所で、第4級の法律審は最高行政裁判所で行います。
*備考2：知的財産局による第1級の事実審と経済部訴願委員会による第2級の事実審が合併し、知的財産局内部のベテラン審査官3∼5名の合議体で審理を行い、第2級の審理は将来の知的財産裁判所で事実審と法律審を行い、第3級の法律審は最高行政裁判所で行います。
可決された「知的財産裁判所組織法」及び「知的財産案件審理法」両法案の特徴と問題点は下記の通りです。
（1）、知的財産裁判所の管轄範囲
1、特許法、商標法、著作権法、光ディスク管理条例、営業秘密法、半導体集積回路回路配置利用権、植物品種及び種苗法又は公平取引法による第一審民事訴訟事件（1名の裁判官により審理を行います）及び第二審民事訴訟事件（3名の裁判官の合議体で審理を行います）
2、地方裁判所による第一審
刑事判決（1名の裁判官により審理を行います）に不服、提起した上訴または抗告の第二審刑事訴訟事件（3名の裁判官の合議体で審理を行います）
3、特許法、商標法、著作権法、光ディスク管理条例、営業秘密法、半導体集積回路回路配置利用権、植物品種及び種苗法又は公平取引法による第一審行政訴訟事件（現在の高等行政裁判所で審理する業務をそのまま引き継ぎます）及び強制執行事件（3名の裁判官の合議体で審理を行います）
知的財産裁判所は高等裁判所として位置付けられてます。可決された「知的財産裁判所組織法」及び「知的財産案件審理法」両法案には、知的財産裁判所の上級裁判所の最高裁判所と最高行政裁判所の変革への言及はありません。
（2）、知的財産裁判所の構成
A、知的財産裁判所裁判官の構成
1、一般の裁判官または検察官
2、知的財産権案件を8年以上経験した弁護士
3、知的財産権に関する法律課程を5年以上講義した大学の教授・副教授・助教授
4、中央研究院で知的財産権に関する法律専門著作を有する8年以上研究した研究員・副研究員・助理研究員
5、知的財産権案件の審査、訴願または法制業務を取り扱う者
将来的に知的財産裁判所裁判官としては現職裁判官を採用することが予想されます。
B、知的財産裁判所技術審査官の構成
知的財産権に関する専門知識を有する者または関連の技術者を技術審査官として任命されます。下記の職務を執行します。
1、当事者、証人又は鑑定人に尋問します
2、案件に対して裁判官に意見を陳述します
3、証拠保全を執行します
証人尋問や当事者尋問などの証拠方法は開示されますが、当事者から証人、鑑定人（鑑定機関）、技術審査官に対して反対尋問をし、その証言の真実性を吟味することができるかどうかについては明示されていません。例えば、原告と被告双方の技術専門家（証人）がそれぞれ均等物に当たるか当たらないかとの意見を証言し、説得力のある結論を出て、裁判官に採用されるという米国特許侵害訴訟の審理方式は開示されていません。
なお、将来的に知的財産裁判所の技術審査官としては知的財産局のベテラン審査官を採用することが予想されます。しかしながら、現時点では、高度な技術に関する特許審査が外部の審査官（例えば大学教授）に依頼する外部審査制度が残っていますが、技術審査官による高度専門技術の審理の公正性と客観性が疑われるという点が指摘されます。
C、知的財産裁判所裁判官助理
案件に対して争点整理、証拠資料の収集・分析などを行います。
（3）、秘密保持命令の導入
知的財産権に係る訴訟の審理は公開されますが、当事者又は第三者の営業秘密を保護するために、当事者又は第三者の請求により、審理を公開しないことが可能です。なお、裁判所は請求により、秘密保持命令を発することができ、訴訟資料の閲覧、抄録又は撮影を制限或いは禁止することが可能です。違反者に対して刑事罰を課します。
（4）、証拠開示制度の導入
各当事者は訴訟に必要な証拠を入手するために相手方又は第三者から情報の開示を求めることができます。裁判所からの証拠開示命令に従わない場合、罰金を課します。この証拠開示制度の導入により、法廷での審理の前に各当事者が十分に事実を解明する機会が与えられ、事実に基づいた公正な裁判が保証されるのは立法の考え方です。しかしながら、このような証拠開示制度は下記のような問題点が指摘されます。
A）、訴訟手続きの前に、裁判所が訴訟の争点となるクレームの範囲をどのように解釈するかを明確にするヒアリングが行われるかどうかについては開示されていません。
B)、訴訟の争点に関する事実解明のために直接関係者に対して尋問を行う証言録取制度に関する規定は不明確です。
C）、現行の制度では鑑定証人（鑑定機関）による鑑定結果を公正に評価する機関がありません。公正性、客観性に問題のある鑑定証人（鑑定機関）による鑑定結果に基づいて判決を下すのは現行の特許訴訟制度の欠点です。可決された「知的財産裁判所組織法」及び「知的財産案件審理法」両法案には、クレームの文言解釈、或いは均等物に該当するかどうかなどの専門技術の評価を行う鑑定証人（鑑定機関）は自分の専門的知識に基づいて意見を陳述するヒアリングが行われるかどうかについては開示されていません。鑑定証人（鑑定機関）に対して尋問することができれば、係争案件に関する事実解明に役立ちます。
（5）、暫定状態を定める仮処分の要件を明確にする
知的財産権紛争に係る訴訟に対し、当事者は暫定状態を定める仮処分を請求することができます。暫定状態を定める仮処分を下す前に、裁判所は両方当事者に意見陳述の機会を与えるべきであります。当事者の説明が足りない場合、裁判所は暫定状態を定める仮処分請求を却下します。
暫定状態を定める仮処分命令を出す前に、裁判所がA)、原告が勝訴する可能性が高いこと、B)、仮処分差止命令が出ない場合に原告が受ける緊急かつ重大な危害、C)、仮処分差止命令が出ることにより被告が受ける危害、D)、仮処分差止命令の公共利益に対する影響、などの要件を考慮して判断するという米国特許訴訟のような審理方式は開示されていません。裁判所は慎重に係争案に対して権利有効性及び侵害の事実を審査しなく、権利有効性及び侵害の事実を立証しないまま、仮処分決定を下せば、当事者に大きな損害を与える虞があるという点が指摘されます。
（6）、裁判所は自ら権利有効性を認定する
知的財産権紛争に係る民事・刑事訴訟において取消、廃止の原因があるかどうかについて、自ら認定することができます。現行の訴訟手続のように、知的財産局又は行政裁判所による権利有効性の判決を待って訴訟手続を停止する規定の適用を排除します。
◆台湾司法院法学資料検索システムのホームページ（http://jirs.judicial.gov.tw)を調べますと、裁判所の特許に関する判例を閲覧することができます。トップページの右側にある「English Version」をクリックしますと、「Latest Updates」、「Search Laws」、「Search J.Y.Interpretations」、「Chinese Version」などの検索アイテムが現れます。「keyword」と「Date」欄に必要なデータを入力すれば、いろいろな情報が出ます。中国語検索ページでは、例えば、最高裁判所の特許に関する判例を閲覧する場合、「判決書査詢」（判決書検索）をクリックしますと、現れた画面の一番上にある「法院名称」（裁判所名称）欄に「最高法院」（最高裁判所）を選んで、判決日期欄に民国90年（2001年）（民国95年は2006年です）1月1日∼民国93年12月31日、全文検索語詞（全文検索キーワード）に例えば「専利」（特許の意味です）を入力すれば、2001年∼2004年の間に最高裁判所での特許に関する判決文を閲覧することができます。現時点では日本語訳文の判決文がありません。
◆現行の台湾行政訴訟法第49条は「当事者は代理人に訴訟行為を委任することができる。但し、一当事者に委任する訴訟代理人は三人を超えてはならない。行政訴訟は訴訟代理人に委任する場合、弁護士を訴訟代理人にしなければならない。弁護士でない場合、1、法令により、訴訟事件と関係ある代理人資格を取得した者、2、当該訴訟事件の専門知識を有する者、3、職務関係により訴訟代理人になる者、4、当事者と親族関係を有する者に該当する者も訴訟代理人になることができる。」と規定されています。また、台湾行政訴訟法第55条は「当事者又は訴訟代理人は、行政裁判所の許可を得て、期日に補佐人とともに出廷することができる。行政裁判所は､必要と認めたとき当事者又は訴訟代理人に補佐人とともに出廷するよう命ずることができる。」と規定されています。原則としては、専利代理人（日本の弁理士に相当）のみでも行政訴訟法廷に出廷することができますが、弁護士を訴訟代理人として、特許技術者・専利代理人を補佐人として出廷するのは普通です。
◆
TRIPs第43、44、50条の条文：
第43条 証拠
(1)
一方の当事者がその主張を十分裏付ける合理的に入手可能な証拠を提出し，かつ，他方の当事者の有する当該主張の裏付けに関連する証拠を特定した場合には，司法当局は，適当な事実において秘密の情報の保護を確保することを条件として，他方の当事者にその特定された証拠の提示を命じる権限を有する。(2)
手続の一方の当事者が必要な情報の利用の機会を故意にかつ十分な理由なしに拒絶し若しくは合理的な期間内に必要な情報を提供せず又は行使に関連する手続を著しく妨げる場合には，加盟国は，双方の当事者が主張又は証拠に関し意見を述べる機会を与えられることを条件として，提供された情報(情報の利用の機会の拒絶によって悪影響を受けた他方の当事者が提示した申立て又は主張を含む。)に基づいて，暫定的及び最終的な決定(肯定的であるか否定的であるかを問わない。)を行う権限を司法当局に与えることができる。
第44条 差止命令
(1) 司法当局は，当事者に対し，知的所有権を侵害しないこと，特に知的所有権を侵害する輸入物品の管轄内の流通経路への流入を通関後直ちに防止することを命じる権限を有する。加盟国は，保護の対象であって，その取引が知的所有権の侵害を伴うことを関係者が知るか又は知ることができる合理的な理由を有することとなる前に当該関係者により取得され又は注文されたものに関しては，当該権限を与える義務を負わない。(2) 政府又は政府の許諾を受けた第三者が権利者の許諾を得ないで行う使用については，当該使用を明示的に定める第2部の規定に従うことを条件として，加盟国は，この部の他の規定にかかわらず，当該使用に対する救済措置を，第31条(h)の規定による報酬の支払に限定することができる。当該使用であってそのような救済措置の限定の対象とならないものについては，この部に定める救済措置が適用され，又は，当該救済措置が国内法令に抵触する場合には，宣言的判決及び適当な補償が行われるものとする。
第50条 暫定措置
(1) 司法当局は，次のことを目的として迅速かつ効果的な暫定措置をとることを命じる権限を有する。(a) 知的所有権の侵害の発生を防止すること。特に，物品が管轄内の流通経路へ流入することを防止すること(輸入物品が管轄内の流通経路へ流入することを通関後直ちに防止することを含む。)(b) 申し立てられた侵害に関連する証拠を保全すること。(2) 司法当局は，適当な場合には，特に，遅延により権利者に回復できない損害が生じるおそれがある場合又は証拠が破棄される明らかな危険がある場合には，他方の当事者に意見を述べる機会を与えることなく，暫定措置をとる権限を有する。(3) 司法当局は，申立人が権利者であり，かつ，その権利が侵害されていること又は侵害の生じる差し迫ったおそれがあることを十分な確実性をもって自ら確認するため，申立人に対し合理的に入手可能な証拠を提出するよう要求し，並びに被申立人を保護し及び濫用を防止するため，申立人に対し十分な担保又は同等の保証を提供することを命じる権限を有する。(4) 暫定措置が他方の当事者が意見を述べる機会を与えられることなくとられた場合には，影響を受ける当事者は，最も遅い場合においても，当該暫定措置の実施後遅滞なく通知を受ける。暫定措置の通知後合理的な期間内に，当該暫定措置を変更するか若しくは取り消すか又は確認するかの決定について，被申立人の申立てに基づき意見を述べる機会の与えられる審査を行う。(5) 暫定措置を実施する機関は，申立人に対し，関連物品の特定に必要な情報を提供するよう要求することができる。(6) (1)及び(2)の規定に基づいてとられる暫定措置は，本案についての決定に至る手続が，合理的な期間(国内法令によって許容されるときは，暫定措置を命じた司法当局によって決定されるもの。その決定がないときは，20執務日又は31日のうちいずれか長い期間を超えないもの)内に開始されない場合には，被申立人の申立てに基づいて取り消され又は効力を失う。ただし，(4)の規定の適用を妨げるものではない。(7) 暫定措置が取り消された場合，暫定措置が申立人の作為若しくは不作為によって失効した場合又は知的所有権の侵害若しくはそのおそれがなかったことが後に判明した場合には，司法当局は，被申立人の申立てに基づき，申立人に対し，当該暫定措置によって生じた損害に対する適当な賠償を支払うよう命じる権限を有する。(8) 暫定措置が行政上の手続の結果として命ぜられる場合には，その手続は，この節に定める原則と実質的に同等の原則に従う。
◆「均等論」について
台湾特許法では「均等論」が明文に規定されていませんが、台湾知的財産局は1996年1月に「特許侵害鑑定基準」（以下旧特許侵害鑑定基準と呼びます）を公告しました。「特許侵害鑑定基準」は法的根拠がありませんが、公的な鑑定機関による「特許侵害鑑定」、裁判所による特許侵害事件の審理は「特許侵害鑑定基準」を参考としています。その後、台湾知的財産局は「旧特許侵害鑑定基準」を改定し、2004年10月に新しい「特許侵害鑑定要点」（以下新特許侵害鑑定要点と呼びます）を公告しました。均等の判断時期について、「旧特許侵害鑑定基準」では「侵害行為時」又は「出願時」が明確に示されていません。「新特許侵害鑑定要点」の第3章の2で「特許請求の範囲を解釈する時期」について、特許請求の範囲の文言範囲は出願時に了解された意義に制限すべきであると記載します。また、「新特許侵害鑑定要点」の第3章の5で「均等論」について、「均等論」の対比は侵害行為が発生するとき、当業者の技術レベルを考慮すべきであると記載します。実務上、台湾の裁判所による特許侵害事件の審理は侵害時を基準とします。これは国際的な調和の視点に立つのではないかと考えます。「新特許侵害鑑定要点」では、「均等論」について、以下の注意事項が記載されています。1、対象製品が特許発明の特許請求の範囲に記載されたいずれの技術特徴を欠く場合は「均等論」を適用しません。2、「均等論」の対比は全体として（as a whole）対比することでなく、構成要素ごと（Element by Element）に対比して判断すべきであります。3、対象製品と特許発明とは対応する技術特徴の「技術手段」、「機能」、「結果」のいずれか1つが実質的に異なる場合、「均等論」を適用しません。4、明細書に記載されましたが、特許請求の範囲に記載されない技術は社会大衆に貢献するものとみなされ、「均等論」を適用しません。5、対象製品が「均等論」を適用し、かつ、被告が「禁反言」又は「従来技術禁止」を主張しない場合、対象製品が特許発明の特許請求の範囲に属すると判断すべきであります。
実務の見解は米国の均等論の考え方を取り入れ、判断の具体的な手段は機能、方法、結果の3要素テスト（tripartite test）がそれぞれ実質的に同一であるかどうかです。1998年の「無限摺動用ボールスプライン軸受」に関する最高裁判決が示した均等論適用要件との異同は以下通りです。
1）、「無限摺動用ボールスプライン軸受」最高裁判決が示した「（1）右部分が特許発明の本質的部分ではなく（非本質的部分にしか均等を認めない）」とは違い、「本質的部分」でも「非本質的部分」でも実質的に同一であれば均等論は成立します。
2）、異なる部分と置き換えても特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏することができれば、均等と認めます。この点は「無限摺動用ボールスプライン軸受」最高裁判決が示した「（2）右部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するもの（置換可能性）」とはほとんど差はありません。
3）、置換に当業者が対象製品の製造時点において容易に思いつくことができれば、均等と認めます。この点は「無限摺動用ボールスプライン軸受」最高裁判決が示した「（3）右のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたもの（置換容易性）」とはほとんど差はありません。
4）、対象製品が特許出願時における公知技術を組み合わせたり、特許出願時における公知技術と多少異なるものを実施していることは均等論を適用しません。この点は「無限摺動用ボールスプライン軸受」最高裁判決が示した「（4）対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく（出願時の公知技術からの容易推考困難性）」とはほとんど差はありません。
5）、特許権者が審査経過で先行技術に基づく拒絶回避のために、自分の意思で特許請求の範囲からある技術事項を放棄すれば、侵害訴訟において放棄されたものは取戻せません。この点は「無限摺動用ボールスプライン軸受」最高裁判決が示した「（5）対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がない（意識の除外）」とはほとんど差はありません。
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